医療・介護、警備、製造、運送などで避けて通れないのが夜勤です。始業と終業が別の日になる勤務は、労働時間をどちらの日に計上するのか、割増賃金をどう計算するのかが分かりにくく、多くの勤怠システムが正しく処理できない領域でもあります。ここでは基本ルールを具体例で整理します。
2暦日にまたがる勤務の基本ルール
労働基準法でいう「1日」は原則として午前0時から午後12時までの暦日を指します。しかし、夜勤のように継続した勤務が2暦日にわたる場合は、例外的な取扱いが定められています。
原則ルール
- 継続勤務が2暦日にわたる場合、その勤務は始業時刻の属する日の労働として、1勤務として扱う
つまり、8月1日の16時から8月2日の9時まで勤務した場合、この17時間はすべて「8月1日の労働」として扱います。翌日にまたがった分を2日目に切り分けることはしません。
労働時間はどちらの日に計上するのか
上記のとおり、原則は始業日にまとめて計上します。これを誤って日付をまたいだ時点で分割してしまうと、次のような問題が起きます。
- 1日の労働時間が正しく把握できず、8時間を超えた分の時間外割増が漏れる
- 法定休日労働の判定がずれる
- 変形労働時間制の総枠の集計が合わなくなる
- 連続勤務日数のカウントが実態と合わなくなる
一般的な勤怠管理システムは日付単位でデータを持つ設計になっていることが多く、またがり勤務を1勤務として扱えないケースが少なくありません。導入前に必ず確認したいポイントです。
深夜割増賃金(22時〜5時)の考え方
労働時間の計上とは別に、深夜割増は実際に働いた時刻で判定します。
| 割増の種類 | 割増率 | 判定基準 |
|---|---|---|
| 時間外労働 | 25%以上 | 法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えた分 |
| 深夜労働 | 25%以上 | 22時〜翌5時に実際に働いた分(日付は問わない) |
| 法定休日労働 | 35%以上 | 法定休日に働いた分 |
| 時間外+深夜 | 50%以上 | 時間外労働が深夜帯にかかった分 |
| 法定休日+深夜 | 60%以上 | 法定休日労働が深夜帯にかかった分 |
よくある誤解
法定休日労働に時間外割増(25%)は加算されません。法定休日には1日8時間という概念が適用されないため、法定休日労働は何時間働いても35%(深夜帯は60%)です。逆に、所定休日(法定外休日)の労働は時間外労働として扱われ、週40時間を超えていれば25%の割増が必要です。
具体例で計算してみる
例:8月1日(金)16:00 〜 8月2日(土)9:00 勤務/休憩 2時間(うち深夜帯に1時間)
- 拘束時間:17時間 休憩:2時間 → 実労働時間 15時間
- この15時間はすべて8月1日の労働として計上
- 法定労働時間8時間を超える7時間が時間外労働
- 深夜帯(22:00〜翌5:00)は7時間、うち休憩1時間を除く6時間が深夜労働
この6時間の深夜労働のうち、時間外労働と重なっている部分は50%以上の割増が必要になります。どの時間帯が時間外に該当するかは、始業からの経過時間で判定します。
このように、1回の夜勤で複数の割増率が混在します。手計算で正確に処理するのは負担が大きく、月間で数十人分となると現実的ではありません。
法定休日にまたがる場合
労働日から法定休日にまたがった場合、または法定休日から労働日にまたがった場合は、始業日に一括する原則とは異なる取扱いになります。
- 労働日の勤務が法定休日に及んだ場合:法定休日の午前0時以降の部分が休日労働
- 法定休日の勤務が翌労働日に及んだ場合:法定休日の午後12時までの部分が休日労働
つまり、労働時間の計上は始業日に一括するのに対し、休日労働の判定は暦日で切り分けるという、異なるルールが同時に適用されます。ここが夜勤の集計で最も間違えやすい部分です。
夜勤の休憩時間
休憩の付与義務は、夜勤でも通常勤務と変わりません。
| 1日の労働時間 | 必要な休憩時間 |
|---|---|
| 6時間以下 | 不要 |
| 6時間超8時間以下 | 45分以上 |
| 8時間超 | 60分以上 |
15時間の夜勤であっても、法律上必要な休憩は60分以上です(労使でそれ以上を定めることは可能です)。ただし、休憩は労働時間の途中に与える必要があり、勤務の最後にまとめて与えることはできません。また、仮眠時間であっても呼び出しに応じる義務がある場合は労働時間とみなされる可能性があります。
システムで対応するときの確認ポイント
導入前に必ず確認したい5項目
- 2暦日にまたがる勤務を1勤務として扱えるか(日付で分断されないか)
- 時間外・深夜・法定休日・所定休日の割増を混在した状態で正しく計算できるか
- 法定休日にまたがる場合、暦日で切り分けた休日労働の判定ができるか
- 変形労働時間制の総枠集計に、またがり勤務が正しく反映されるか
- 休憩の付与漏れを実績入力の時点でチェックできるか
これらのうち1つでも対応していないシステムでは、結局Excelでの補正作業が残ります。夜勤のある職場では、システム選定時にこの点を最優先で確認することをおすすめします。
よくあるご質問
夜勤の労働時間は始業日と終業日のどちらに計上しますか?
継続した勤務が2暦日にわたる場合は、始業時刻の属する日の労働として1勤務で扱います。8月1日16時から8月2日9時までの勤務であれば、全体を8月1日の労働時間として計上します。
深夜割増はどの時間帯に発生しますか?
22時から翌朝5時までに実際に働いた時間に対して、25%以上の割増賃金が必要です。労働時間をどの日に計上するかとは別に、実際の時刻で判定します。
時間外労働が深夜帯にかかった場合の割増率は?
時間外割増25%と深夜割増25%が加算され、合計50%以上になります。法定休日労働が深夜帯にかかった場合は35%+25%で60%以上です。
15時間の夜勤でも休憩は60分でよいのですか?
労働基準法上の最低基準としては、8時間を超える労働に対して60分以上の休憩を与えれば足ります。ただし労働時間の途中に与える必要があり、仮眠時間でも呼び出しに応じる義務がある場合は労働時間とみなされる可能性があります。
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※ 本記事は労働関連法令の一般的な情報を提供するものであり、個別の事案に対する法的助言ではありません。 制度の詳細や自社での適用については、厚生労働省・労働基準監督署の公表資料をご確認いただくか、社会保険労務士等の専門家にご相談ください。 記載内容は2026年8月19日時点の情報にもとづいています。